高槻市立天神山図書館

2021.10.16

 

 

 

 

なつかしい風景

静かな住宅街の一角
坂道の小さなノリ面に桜の木が二本植えられている。
子どもの頃の忘れられない景色。

 

001の600.png

                                                                  ( 写真がないのでGoogleMapより転載)

 

まっすぐ坂を登る道と、右に下るように進む道との分岐点。
まっすぐ進み左に曲がったところに林に包まれた公園があって
その隣に、当時高槻市で唯一の図書館があった。
小学4年ぐらいから何度も通ったなつかしい道。

家からバス停まで10分、
バスで国鉄高槻駅まで25分、
さらに図書館までは子どもの足で20分ほど歩く。

駅から天神さん(上宮天満宮)の参道を北へ
鳥居をくぐらずに左、すぐ右
そこから坂がはじまって
静かで立派な家が建ち並ぶ天神町一丁目にはいる。
どの家も庭が広くて木がたくさん植えられていて
ゆったりとして気持ちがいい。
おなじ住宅街とはいえ、
僕の家の周辺の小さな家が鮨詰めになった風景とは全く違う。

ここを歩くのが好きだった。

しばらく坂道を歩いたところに
あの道の分岐点がある。
桜の葉が、涼しげに揺れる木かげ模様を写している。
ちいさな僕はそこに来るたびに
「なんて素敵な、なんてほっとする場所なんだろう」
そうやって立ち止まり
うっとりと眺めた。

 

002のコピー.png

                  ( 写真がないのでGoogleMapより転載)

 

 

しかし
目的の図書館はもう間近に迫っていて
いつも、ゆっくり眺めたい気持ちと
すぐにでも図書館に行きたいという早る気持ちとが
攻めぎ合うのだった。

図書館には児童書がたくさん並んでいて夢のような場所だった。
カウンターには新しく入った本が紹介されていて
すこしそれをチェックしたあとは
欧米の翻訳物の棚に直行する。
リンドグレーンやピアス、ケストナーと出会った棚。
当時、学校の図書室にはこのような海外の作品は少なくて
この図書館でないと見つけることはできなかった。

 

 

天神図書館のコピー.jpg

                    ( 写真がないのでWikipediaより転載)

 

 

ここには小学4年ぐらいから行くようになった。
ときどき友達を誘っていくのだが
2週間後に本を返すときは、きまって僕が友達の分も持って行くことになる。
だからだいたいは一人で。手提げ袋に5、6冊の本を入れて。

僕にとって図書館は現実から離れた別世界につながる特別な場所だった。
図書館ではイギリスにも北欧にもアメリカにも宇宙にだっていけるのだ。
まるで、大きな空港のロビーにいる気分。
たくさんの搭乗口の案内にさまざまな到着地が示されていてそれを見ている気分。
(今も羽田空港は大好き)

子どもの頃の図書館の思い出は
この坂道の桜と共にいつまでも色褪せることはないだろう。


今見ると、なんてこともない住宅街の一角。
でも僕にとっては大切なあの頃の時間を残した場所。

 

 

 

 

 

 

 

 

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